TRUCK

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11:00AM - 7:00PM
定休日 : 毎週火曜日・水曜日
535-0022 大阪市旭区新森 6-8-48
TEL 06 6958 7055 / FAX 06 6958 7056

Bird

11:00AM - 7:00PM
ラストオーダー
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定休日 : 毎週火曜日・水曜日
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BACKSTORIES by Tokuhiko Kise

唖然とした。
’98年の冬、材木屋のがらんと広い倉庫に横たわっている数枚の板。
アメリカから空輸でやってきたホワイトオーク。
節や割れがしっかり入っているのを頼んだので
ゴリゴリとしていて見ただけで硬く重いことがわかる。
その上、見たことないウネリ。
今まで使ってきた材とはまるで違う物体に感じた。

23歳で独立して家具を作り出し、約6年後の’97年にTRUCKとしてオープン。
1階の店の裏にある工場で家具を作り、
2階にイラストレーターのひりんことラブラドールのバディと住んでいた。

’99年2月、大阪は堀江のギャラリーでエキシビジョンを開催することになった。
”Truck Tables 3×3、ideas on specimens on table”
TRUCKの世界観をあえて家具ではないもので表すことにした。
どこかで拾った小石や葉っぱ、イラスト、日常を切り取った写真、
8ミリで撮影したショートムービーが見れるおもちゃなど。
そんなこんなを500×500、高さ550㎜ の9つの台の上に置くという内容。

それまでは、いかにキレイな木で作るかをずっと考えてきた。
作る過程で節やシミなどが出てきたら、潔く別の材から取り直していた。
まずキレイな面から手押しをかけ、自動で厚みをきめていく中で欠点を落としていく。
節があるなんて言語道断、ありえなかった。

ある日、自動から出てくる板に小さな節があるのを見ながら思った。
”節もおなじ木やのに、見せ方次第でかっこよく思えるんちゃうん”

ギャラリーでの展示に使う台に、思いっきり節とか割れがある材を使ってみよう。
主役はその上にあるもの。でもその下にぐっとくる存在感が欲しい。
手っ取り早く古材を使えばいいかもしれない。
でも、だからといってTRUCKの家具に古材は使わない。
新しい木を使って新しい家具を作っている。
使ってもらってその人、その人の色になっていくのが理想。

そう思い立ってからイメージする材木を手に入れようとした。
いつもの材木屋に聞いても無い。
こちらの思いを説明してあちこち当たってみてもどこにも無い。
今でこそ見られるようになった節とか割れのある材木だが
当時の材木屋にはまだ、まったく無かった。
そもそも、日本人は節などがない、すっきりキレイな木が好きで
製材時に節などが出ないように挽いていると聞かされた。
でも自分の中ではイメージが固まっている。
どうしてもがっつりした節や割れのある材が欲しい!

「アメリカのホワイトオークだったらいけるかも」と聞いた。
それに賭けてみることにした。
エキシビジョンの開催日が迫っている。
のんびりと船に乗ってやって来るのを待っている猶予はない。
飛行機なら間に合いそう。
でも、なんと運賃が50万円!!
材木代は10数万円なのに。当時の家賃が32万6千円。たじろいで眩暈がしそう。

やってみないと始まらない。
工場に持ち帰り作業に取りかかる。
今までとはまったく逆、キレイな面からでなく節などがある側から削っていく。
すごく違和感があった。
天板の中、どこにどの節がくるようにし、どこに割れを配置するのか。
まるで絵を描いているような新鮮な気分。
今までダメとされていた節が、堂々とそこにあった。

ギャラリーに置いてた記帳のノートにこんなコメントがあった。
『台として使われている主役ではないテーブルが、存在感があってかっこいい』
嬉しかった。分かってもらえる人がいた。

エキシビジョンを終え、大きなテーブルを作ってみた。
2000×900、天板の厚みは50数㎜。ガッツリと力強い。
本来フラットであるはずの天板は所々大きく窪んだり、節の穴が有り割れたり、ガサガサしている。
接ぎ合わせた板と板に段差がある。接着材まで残ったままにしていた。
思いっきりやりたい放題。
自分では大満足。嬉しいので店の一等席にドーンと置いた。
その想像を超えた重さも驚き。

でも、まさか売れるとは思っていなかった。
ふきんで拭くにも引っ掛かる。服にも引っ掛かる。

しばらくすると、それが好きと言う人がでてきた。
当時、かなり特殊なものと考えていたので、
『節や割れ、荒木や段差は商品の特徴であることを理解しました』
そんな内容の承諾書を作った。
購入を希望する人には、サインをもらった。
TRUCKを代表する素材となった今でも、それは続けている。

その後だんだんと進化し、見た目の節や割れは以前と同じでも、触るとどこも優しい手触りに仕上げ、
ふきんが引っ掛かるようなことは無いように、ふきん引っ掛かりテストもしている。
(TRUCKに展示しているのは最初に作ったもので、当時の姿が見れる)

うちの家にある長さ2500㎜ のOAK TABLE、
15年以上使って、キズができたりたくさんの染みが付き、いい色になって風格を増している。
すき焼きにお好み焼き、たこ焼きと油も飛び放題。
それらを拭いて延ばして「これもオイルフィニッシュや」と笑い飛ばす。
そんな気を使わない、まるで道具のような存在となっている。

※手押し、自動はいずれも木工機械。手押しで基準面を作り、自動鉋盤で厚みを決める。

黄瀬 徳彦