BACKSTORIES by Tokuhiko Kise
SUTTO DAY BED
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デイベッドという響きが気になっていた。
どこか気持ち良さそうな、陽だまりの暖かさも含めて想像していた。
自分の育った家にはもちろんなかったし、友人知人の家でも見たことがなかった。
昼用のベッドなのか、夜は使わないのか、もしそうなら、なんと贅沢。昼専用って。
寝るものか座るものか?どうするものか?よくわからない。
でも、なぜかずっと気になっていたし、いつか作ってみたいと心のどこかで思っていた。
そしてその時が来た。作ってみることにした。突然スイッチが入った。
いつものノートに4Bの筆圧の強い線で何度も同じような絵を繰り返し描く。
そのうちにだんだんと見えてくる。どこをどうしたいのか。自分が欲しいデイベッド。
ちょうどその頃に作ってもらっていたウールとコットンの布地、色は軍モノ的なオリーブ。
これがピッタリだと思った。エレガントな奥様仕様ではなく、野性味ある機能重視仕様。
野営テントにズラッと並んでいてほしい。そんな男前仕様のデイベッド。
コーナーを細かくアラレに組んで作った木枠に鉄の脚。
硬さや沈み具合を何度も試してみる。座っても寝転んでもいい具合を模索する。
形になったのでさっそく家に持って帰って部屋に置いてみた。
祝、人生初デイベッド。
見た目はいい。さて、これからどう使えるのか。
まず、昼ごはんの後に目が合った。ちょっと横になってみる。
両端に置いた羽のクッションが優しい。足を伸ばしてクッションに乗せる。
気がつくと、15分くらいストンと寝ていた。
昼にベッドに入って寝るのはあまりにも本気で寝るようで、かといってソファで横になって、ともまた違う。
そんな微妙なところに役割があった。
寝るだけでなく、ベンチ的に気軽にふと座れる。すっと立ち上がれる。
壁に寄せて置けば、クッションの使い方でソファにもなる!と、どんどん存在感を増していくデイベッド君。
もちろん友達が泊まる時はベッドとして。
一家に一台デイベッド。そんなことになる日も近い!?
もう少し優しいのがお好みのあなたには、木製の脚もあります。
黄瀬 徳彦