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BACKSTORIES by Tokuhiko Kise

背中で語る。
かっこいい。多くを語らず態度で示す。
でも、ここは言葉で語る場、すこし語らないと。

ソファを考える時、つい前からと横からの事だけを想像しがちになる。
後ろ姿は成り行きになってしまっても気にならないことが多かった。
でも部屋の中で、壁につけず間仕切りのように置かれることもある。

このソファは木で組み上げた背板と側板が静かに佇む。

部屋に入ってまず、背中が見える。そして横を通り抜けて前に立ち、振り返ることなく座って体を預ける。
その時ある種、意表をつかれたように感じるかもしれない。

あんなにすっとした佇まいだったのに、実はこんなに大きな懐をもっていたのね、と。
えっと思って立ち上がり、よく見直すと、ただすっとしているのではないことに気付く。

ゆるい曲線で仕上げた外のラインは、そっと触れれば、その優しさが伝わってくる。
内側に施したアールからは落ち着きが滲み出る。
なんだか嬉しくなって、そこで小さく心の中でにっこりする。
そのままの気持ちでもう一度前にまわり、今度は意識を集中して座り直す。
そこで、人目を気にせず、にやっとする。
声を出して笑ってしまってもいい。嬉しくて肘掛を軽くたたき、撫でる。
軽く握ると親指と中指にアールを感じる。
その手触りを味わいながら、頭を背のクッションに預けて深呼吸。
体にたっぷりフェザーを感じながら。

想像して書いているだけでも幸せな気分。

ミナペルホネンで作ってもらった生地は、コットンなのにスウェードのような肌触りで、
さっくりとしていて気持ちいい。
無地なのにすごく表情があって、これまた無言で語っているように思えてくる。

黄瀬 徳彦